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2026.10.10
症例ブログ

重度の受け口を手術なしで治療した症例|33歳女性・表側矯正・4本抜歯


反対咬合の矯正治療 治療前後の横顔 33歳女性 下唇の突出が改善
治療前(左)と治療後(右)の横顔。下唇の突出感が改善しました。※治療結果には個人差があります。

この症例のまとめ

骨格性の下顎前突を伴う重度の反対咬合(受け口)の33歳女性を、外科手術を行わず、矯正治療のみで治療した症例です。上下左右の第一小臼歯(計4本)を抜歯し、表側矯正の治療法であるJET Systemを用いて、24ヶ月で治療を終えました。
前歯の逆の噛み合わせは、装置を付けてから約4ヶ月で正しい向きに改善しました。治療後は上下の前歯がきれいに並び、下唇の突出感も改善しています。

この記事の結論

骨格性の反対咬合でも、上下の顎のズレが歯の移動で補える範囲に収まっていれば、外科手術を併用せずに矯正治療だけで改善できる場合があります。手術が必要かどうかは、セファロ(頭部X線規格写真)とCTによる精密検査と、治療後の歯の位置のシミュレーションで判断します。

症例データ

項目内容
年齢・性別33歳・女性
地域東京都目黒区
主訴受け口を治したい
来院のきっかけ結婚式を控えていた
診断名叢生を伴う前歯部反対咬合(骨格性Ⅲ級・Angle Ⅲ級)
治療方針矯正治療単独(外科手術なし)
治療法・使用装置JET System(表側矯正装置を用いる治療法)
抜歯の有無あり(上下左右の第一小臼歯 計4本)
治療期間24ヶ月
前歯の被蓋改善までの期間装置装着から約4ヶ月
治療費88万円(税抜)+調整料
主なリスク・副作用記事末尾に記載

重度の反対咬合は、手術をしないと治らないのか

結論からお伝えすると、骨格性の反対咬合でも、矯正治療だけで改善できる場合があります。ただし、すべての反対咬合が矯正治療だけで治るわけではありません。
反対咬合の治療方法は、大きく2つに分かれます。

矯正治療単独(カモフラージュ治療)

顎の骨の位置はそのままに、上の前歯を前方へ、下の前歯を後方へ動かして、歯の位置で骨格のズレを補う方法です

外科矯正(外科手術併用の矯正治療)

顎の骨を手術で切って位置を変え、骨格のズレそのものを治す方法です。全身麻酔と入院が必要です

どちらが適しているかは、主に次の3点で判断します。

  • 01. 上下の顎の前後的なズレの大きさ:ズレが大きすぎると、歯の移動だけでは補いきれません
  • 02. 歯を動かせる骨の幅:特に下の前歯を後ろへ動かす量が、歯を支える骨(歯槽骨)の幅の中に収まるかどうか
  • 03. 横顔に求める変化の大きさ:下顎の突出感そのものを大きく変えたい場合は、外科矯正のほうが適しています

本症例は外科矯正も選択肢になる症例でしたが、精密検査とシミュレーションの結果、矯正治療単独でも噛み合わせの改善が見込めると判断しました。

反対咬合(受け口)とは

反対咬合とは、噛み合わせたときに下の前歯が上の前歯よりも前に出ている、通常とは逆の噛み合わせのことです。 一般には「受け口」と呼ばれます。下顎が上顎より前に出ている骨格的な状態を伴う場合は「下顎前突」とも呼ばれます。

反対咬合には、歯の傾きが原因の「歯性」と、顎の骨の大きさや位置が原因の「骨格性」があります。本症例は骨格性のズレを伴うタイプでした。

反対咬合を放置した場合のリスク
  • 前歯で食べ物を噛み切りにくい:上下の前歯が正しく接触しないため、麺類や葉物などを前歯で噛み切ることが難しくなります
  • 特定の歯に負担が集中する:噛み合わせの力が一部の歯にかかり、歯のすり減りや欠けの原因になります
  • 下の前歯の歯ぐきが下がりやすくなる:下の前歯が上の前歯に押されることで、歯ぐきが下がったり、歯を支える骨が薄くなったりすることがあります
  • 発音への影響:サ行・タ行などが発音しにくくなることがあります
  • 見た目のコンプレックス:下唇や下顎が前に出た横顔の印象が気になり、人前で笑うことに抵抗を感じる方も少なくありません

初診時の状態

見た目のお悩みに加えて、「前歯で物が噛み切れない」「奥歯の負担が心配」という機能面の主訴が来院のきっかけでした。
本症例の患者様は、「若い頃から下あご(下顎)が出ているのが気になっていた。年齢も年齢なので諦めていたが、前歯で物が噛み切れないだけでなく、奥歯の負担や将来の歯の寿命が心配になってきた」とお話しされ、ご来院されました。
患者様のご希望は、「健康な歯はなるべく抜きたくない」「受け口(下顎前突)と横顔のバランスを骨格から整えたい」というものでした。

治療前の口腔内写真 下の前歯が上の前歯を覆う反対咬合と叢生 33歳女性
初診時。下の前歯が上の前歯の前に出て、上の前歯がほとんど見えない状態でした。上下とも歯の重なり(叢生)がみられます。
  • 下の前歯が上の前歯を前から覆い、上の前歯がほとんど見えない反対咬合
  • 上下の歯列に叢生(歯の重なり・ガタつき)。特に上の犬歯は歯列から外側・上方にはみ出していた
  • 下唇が前に突出した横顔
  • 結婚式を控え、それまでに見た目を改善したいというご希望

なぜこの治療方針を選んだのか

外科手術ではなく、矯正治療単独を選んだ理由

本症例は、骨格性の下顎前突を伴っており、外科手術を併用する方法も考えられる症例でした。
しかし、患者さんは結婚式を控えておられ、全身麻酔での外科手術や入院までは希望されませんでした。そこで治療前に、精密検査の資料をもとに歯の移動のシミュレーションを行い、矯正治療単独で前歯の噛み合わせと叢生の改善が見込めることを確認してから、治療を開始しました。
上下左右の第一小臼歯を抜歯したのは、歯列からはみ出していた犬歯を並べるスペースを確保すると同時に、下の前歯を後方へ移動させるスペースを作るためです。

すべての反対咬合が、矯正治療だけで治るわけではありません。顎のズレが大きい場合や、下顎の突出感そのものを大きく変えたい場合には、外科矯正が適していることもあります。治療方法の判断には、精密検査による十分な診断が必要です。

JET System を選んだ理由

反対咬合の治療では、上の前歯を外側へ、下の前歯を内側へ移動させて、前後の噛み合わせを逆転させる段階があります。この段階は前歯の先端同士がぶつかりやすく、患者さんにとって最も噛みにくい時期になります。

JET System は、摩擦の少ないブラケットと細いワイヤーを組み合わせて弱い力で歯を動かし、さらに抜歯後に骨の代謝が一時的に活発になる時期(RAP:局所促進現象)に合わせて歯の移動を進める、表側矯正の治療法です。この噛みにくい期間をできるだけ短くするために、本症例では JET System で治療を行いました。

本症例では、装置装着から約4ヶ月で、前歯の逆の噛み合わせが正しい向きに改善しました。

治療経過

JET System による表側矯正装置を装着した反対咬合の口腔内
装置装着時。上下の歯に表側矯正装置を装着しました。
  • 装置装着:上下に表側矯正装置を装着し、JET System による治療を開始
  • 1〜3ヶ月:第一小臼歯を抜歯したスペースへ犬歯を移動させながら、上の前歯を前方へ、下の前歯を後方へ移動
  • 約4ヶ月:前歯の逆の噛み合わせが改善し、上の前歯が下の前歯の前に出る正しい向きに
  • 5ヶ月〜1年:抜歯スペースを閉じながら、歯列全体を整える
  • 1年〜2年:上下の奥歯の噛み合わせを細かく仕上げる
  • 24ヶ月:装置を外し、保定装置(リテーナー)による保定期間へ
矯正治療開始4ヶ月後 前歯の反対咬合が改善した口腔内
装置装着から約4ヶ月後。前歯の逆の噛み合わせが改善しています。
矯正治療開始12ヶ月後の口腔内 抜歯スペースの閉鎖
装置装着から12ヶ月後。抜歯したスペースが閉じ、歯列が整ってきました。

治療結果

治療後の口腔内写真 反対咬合と叢生が改善 33歳女性
治療後。前歯の噛み合わせが正しい向きになり、上下の歯並びが整いました。※治療結果には個人差があります。

24ヶ月の治療で、外科手術を行わずに次の改善が得られました。

  • 前歯の逆の噛み合わせが改善し、上の前歯が下の前歯の前に来る正しい被蓋になった
  • 上下の叢生が改善し、前歯がきれいに並んだ
  • 下唇の突出感が改善し、横顔の印象が変わった

なお、矯正治療単独の治療では顎の骨の位置そのものは変わらないため、下顎の大きさや位置は治療前と同じです。横顔の変化は、主に前歯の位置と傾きの変化によるものです。

治療結果には個人差があります。同様の治療がすべての方に適用できるわけではありません。

院長より

結婚式を間近に控えて、受け口の治療にいらっしゃいました。外科手術も検討される骨格性の反対咬合でしたが、ご希望を伺ったうえで精密検査とシミュレーションを行い、矯正治療のみで治療する方針としました。

前歯が逆に噛んでいる時期は、患者さんにとって最も噛みにくく負担の大きい期間です。JET System で治療を進めたことで、この時期を約4ヶ月で終えることができ、ご希望に沿った結果を得ることができました。

「受け口は手術しないと治らない」と言われて治療をあきらめていた方も、まずは精密検査で、ご自身の状態と選べる治療方法を知るところから始めてみてください。

よくある質問

Q

重度の受け口(反対咬合)は、手術をしないと治りませんか?

骨格性の反対咬合でも、上下の顎のズレが歯の移動で補える範囲であれば、外科手術を併用せずに矯正治療だけで改善できる場合があります。本症例では33歳女性の骨格性の反対咬合を、上下左右の第一小臼歯4本の抜歯と表側矯正のみで、24ヶ月かけて治療しました。ただし顎のズレが大きい場合は外科矯正が適しているため、精密検査での判断が必要です。

Q

外科矯正と、矯正治療だけの治療は何が違いますか?

外科矯正は顎の骨を手術で動かし、骨格のズレそのものを治す方法で、全身麻酔と入院が必要です。矯正治療だけの治療は、顎の骨の位置は変えずに、上下の前歯の位置と傾きで噛み合わせを整える方法です。下顎の突出感を大きく変えたい場合は外科矯正、手術を避けたい場合や顎のズレが中程度までの場合は矯正治療単独が検討されます。なお、顎変形症と診断された外科矯正は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たした医療機関で行う場合に健康保険が適用されます。

Q

重度の反対咬合を矯正治療だけで治した症例の、治療期間と費用は?

治療期間は24ヶ月、費用は88万円(税抜)+調整料でした。矯正治療は自由診療(保険適用外)です。前歯の逆の噛み合わせは、装置装着から約4ヶ月で改善しました。

Q

JET System とはどのような治療法ですか?

摩擦の少ないブラケットと細いワイヤーを組み合わせて弱い力で歯を動かし、抜歯後に骨の代謝が一時的に活発になる時期(RAP:局所促進現象)に合わせて歯の移動を進める、表側矯正の治療法です。ブラケットとワイヤーの間の摩擦が少ないと、抜歯直後に使う細いワイヤーの段階から、歯を目的の位置へ引き寄せやすくなります。

Q

抜歯をすると歯が動きやすくなるのはなぜですか?

抜歯などの外科的な処置の後には、周囲の骨の代謝が一時的に活発になる「RAP(局所促進現象)」が起こることが知られています。この効果は抜歯後おおよそ数ヶ月続くとされ、本症例ではこの時期に前歯の噛み合わせを改善する段階を進める計画を立てました。

Q

治療中の痛みはありますか?

装置を付けた直後やワイヤーの調整後に、数日間、歯が浮くような痛みや噛みにくさが出ることがあります。JET System は弱い力で歯を動かすことを目指した治療法ですが、痛みの感じ方には個人差があります。

Q

30代からでも受け口の矯正治療はできますか?

できます。歯は年齢に関係なく動くため、30代・40代以降でも矯正治療は可能です。本症例の患者さんも33歳で治療を始めました。ただし大人は顎の成長が終わっているため、骨格のズレがある場合は、矯正治療単独で治せるか、外科矯正が必要かの見極めがより重要になります。

Q

結婚式など、期限がある場合でも治療できますか?

期限までにどこまで改善できるかは、治療前のシミュレーションでおおよその見通しをお伝えできます。本症例では装置装着から約4ヶ月で前歯の逆の噛み合わせが改善しました。ただし治療全体には2年程度かかることが多く、期限の時点では装置が付いている可能性があります。白や透明の目立ちにくい装置の選択や、一時的に装置を外す対応が可能かどうかも含めてご相談ください。

Q

矯正治療にはどのようなリスクがありますか?

歯の痛みや違和感、歯根吸収(歯の根が短くなる)、歯肉退縮、後戻りなどのリスクがあります。反対咬合を矯正治療単独で治す場合は、下の前歯を後方へ大きく動かすため、下の前歯の歯ぐきや骨が薄くなるリスクに特に注意が必要です。詳しくは記事末尾の「主なリスク・副作用」をご覧ください。

本症例の治療内容・費用・期間・リスクについて

治療内容

JET System による表側矯正治療(上下左右の第一小臼歯 計4本を抜歯)。外科手術は併用せず、矯正治療単独で治療。動的治療終了後、保定装置(リテーナー)による保定期間へ移行。

費用

治療費 88万円(税抜/税込96.8万円)+調整料 1回5,000円(税抜/税込5,500円)
矯正治療は自由診療(保険適用外)です。調整料は通院ごとにかかり、24回分が上限です。精密検査・診断料など料金体系の詳細は料金ページをご覧ください。

治療期間

動的治療期間 24ヶ月。その後、保定期間に移行します。

主なリスク・副作用

動的治療期間 ※矯正治療全般のリスク・副作用はリスク・副作用のページもあわせてご覧ください。

治療中に起こることがあるもの(多くは一時的、または対応が可能です)

  • 装置の装着後や調整後に、数日間、歯が痛んだり噛みにくくなったりすることがあります
  • ブラケットやワイヤーが頬・唇・舌に当たり、口内炎ができることがあります
  • 装置の周りに汚れが残ると、歯肉が腫れたり出血したりすることがあります
  • 歯の移動に伴い、歯の根がわずかに短くなる(歯根吸収)ことがあります
  • 歯並びが整うことで、歯と歯の間の歯ぐきに三角形の隙間(ブラックトライアングル)が見えることがあります
  • ブラケットが外れたり、ワイヤーがずれたりすることがあります
  • 歯の動きには個人差があり、治療期間が予定より長くなる場合があります
  • 治療後も歯は少しずつ動くため、保定装置の使用が必要です

頻度は低いものの、起きた場合に追加の処置が必要になることがあるもの

  • まれに、歯の根が大きく短くなることがあります
  • まれに、歯の神経が反応しなくなり、根管治療が必要になることがあります
  • 歯ぐきが下がり、歯の根が露出することがあります
  • 歯の移動の方向や骨の厚みによっては、歯を支える骨が薄くなることがあります
  • 歯と骨が癒着している場合、歯が予定どおりに動かないことがあります
  • 顎関節に痛み・音・口の開けにくさなどの症状が出ることがあります
  • 金属やゴムなどの材料に、アレルギー反応が出ることがあります
  • 外れた小さな装置を飲み込んだり、まれに気道に入ったりする可能性があります

反対咬合を矯正治療単独で治す場合に特に注意が必要なもの

  • 下の前歯を後方へ大きく動かすため、下の前歯の歯ぐきが下がったり、歯を支える骨が薄くなったりするリスクがあります
  • 顎の骨の位置は変わらないため、横顔の変化には限界があり、下顎の突出感が残る場合があります
  • 骨格的なズレがあるため、治療後に噛み合わせが後戻りしやすく、保定装置を指示どおりに使用することが特に重要です
  • 治療中の経過によっては、外科矯正への方針変更をご提案する場合があります

患者さんのご協力で減らせるもの

  • 虫歯・歯の表面が白く濁る(ホワイトスポット):丁寧な歯磨き、フッ素の使用、定期検診
  • 歯肉炎・歯周病:汚れを残さない歯磨き、定期的な歯周管理
  • 装置の破損:硬い食べ物・粘着性のある食べ物に注意する
  • 治療期間の延長:予約どおりに通院する、顎間ゴムなどを指示どおり使用する
  • 後戻り:保定装置(リテーナー)を指示どおり使用する
掲載写真について

掲載している症例写真は、患者さんご本人の同意を得たうえで掲載しています。

監修者

吉田 健(よしだ けん)

目黒パークサイド矯正歯科 院長/歯学博士(歯科矯正学)

  • 公益社団法人 日本矯正歯科学会 認定医
  • 所属学会:日本矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、鶴見歯科学会
  • 1995年 鶴見大学歯学部卒業、同大学歯学部矯正科に入局(診療科助手)
  • 2004年 歯学博士号取得
  • 2008年 目黒パークサイド矯正歯科 開業

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