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2021.07.11
矯正を学ぶドクターへ

一人で治療が出来るようになるまで


矯正治療をこれから学ばれるドクターへ、一人で治療が出来るようになるまでに何をしないといけないのかを少しまとめてみます。

一番重要なのは、診断です。

今、どのような状況なのか、現状の把握が最重要になります。その手立てとして、口腔内写真、顔面写真、レントゲン、歯列模型、口腔内診査などの資料を採取します。

次に、資料の分析を行います。何が原因で現在の不正咬合が生じているのか、原因の同定を行います。

原因がわかったところで、その原因を取り除く方法を考え、手順を考えます。これが治療計画になります。

治療計画を考えるうえで大切なのは、実現性です。例えば、上顎の大臼歯の遠心移動を5mm計画したとします。

その数字を自分が実現できるのか考えます。6-7coilで実現するのか、バルパスループで実現するのか、エクステンションLAで実現するのか、などそんなにたくさん方法がある訳でないので、一通り知識を仕入れて考えます。

つぎに、それぞれの方法のより具体的で詳細な情報を仕入れます。ワイヤーサイズはどのくらいがいいのか、バルパスの場合、ループの高さは、ストッパーの位置は、エクステンションLAの場合、設計はなど仕入れます。

最後に、実際に適用する口腔内の状態、患者さんの協力度、神経質かそうでないのか、仕事の内容など、メカニカルな情報以外の大切な情報を検討します。

そのうえで、先ほどの数字を実現できるのかどうか再度考えます。

もし、不安があるならば、他の方法を検討します。

そのようにして、実現可能と自信を持てる治療計画をたてて行きます。

治療の中で取り除かないといけない不正咬合の原因も、除去する順番を考慮することが必要です。

たとえば、上下ともにハイケナインであって、上下4番抜歯である場合、通常は、上下同時に、平和に遠心移動すればいいのですが、たまに、三級傾向で上顎の犬歯が下顎の犬歯をロックしてかつクロスバイトの場合、まず上顎の犬歯を引いて、クロスバイトを改善できるだけのスペースを作り、クロスバイトを改善してはじめて下顎の犬歯を引くことが出来るようなこともままあります。

クロスバイトの改善も、ディファレンシャルワイヤーをベンドできる力があるのか、ナイチノールワイヤーでしか治す技量がないのか、大切な判断材料になります。

診断をし、自信を持てる治療計画をたて、実際の治療に入ります。

治療に入ると、予想外のことがまま起こります。

そこで大切なのが、リカバリー力です。不本意な歯の動きが生じた場合、どんな原因で生じたのか原因を把握することが最優先です。原因を究明出来る力があること、ついで、それを治す方法(いわゆる引き出し)をだれだけ知っているのかが大切です。

それらをクリアーしてはじめて治療が完了します。

治療を振り返って、治療計画と実際の治療に乖離があれば、どこにその原因があったのかを反省することで、非常にスキルアップすると思います。

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