リンガルブラケットで治療中の方は、結構な数いらっしゃると思うのですが、多分、フジタブラケットで治療中のかたは、ほとんどいらっしゃらないと思います。
どんなリンガルブラケットが売れているのか
今、日本でリンガルブラケットが一番売れているのは、クリッピーL、次いで、アリアス、ハーモニーなどが続き、フジタブラケットのシェアは、決して多くはありません。
フジタブラケットのシェアが少ない理由は、品質が悪いとか、性能が悪いからといった理由では全くなく、逆に、品質、性能は間違いなく一級品です。
私などは、リンガルの治療を、最初からフジタメソッドで教わり、最初からフジタブラケットを使用していたので、その扱いやすさ、性能の高さは身に染みてわかっています。
今、舌側矯正治療をされている先生のルーツをたどると間違いなくフジタメソッドで学ばれた先生に行きつくはずです。
なぜかと言うと、舌側からの矯正治療、いわゆるリンガルの治療は、藤田先生が世界で初めてはじめられた治療法(フジタメソッド)だからです。
フジタメソッドから始まったリンガル治療ですが、より簡単で単純な装置がいろいろと開発されて、今に至ります。
簡単で単純な装置からリンガル治療を始められた先生は、そもそもフジタブラケットを知らなかったり、触ったことがないので、フジタブラケットを使うことはまずありません。
たいてい、リンガルの治療は、教わった先生が使っていたブラケットを使うことがほとんどなので、フジタブラケットを使う先生がますます減り、フジタブラケットのシェアが少なくなり、今に至ります。
フジタブラケットが優れているわけ
スロットが複数(3本)ある
フジタブラケットが圧倒的に他のリンガルブラケットと異なる点は、ワイヤーが通る溝(スロット)が3本あるところです。
フジタブラケット以外のブラケットは、スロットが1本しかありません。その差は極めて大きく、例えば、八重歯の治療の時に、小臼歯を抜いて、犬歯を引っ張ってくるのですが、その時に、スロットが1本しかないと、細いワイヤーで犬歯を引っ張るしかなく、犬歯に他の歯が引きずられて歯並びが崩れるということが起こります。
しかし、複数のスロットがある場合、動かしたくない犬歯以外のには太いしっかりしたワイヤーを入れておき、もう一つのスロットに細いワイヤーを入れて犬歯を引っ張るということが出来ます。
この方法ですと、犬歯以外の歯は、太いワイヤーに支えられて全く動かず、犬歯のみが動くという理想的な動きが得られます。治療において、この差はとても大きいです。
むし歯、歯肉炎になりにくい
フジタブラケットは、スロットが複数あるだけでなく、衛生面でもこだわりがあり、藤田先生は治療中にむし歯を作りたくないという思いから、清掃性を高めるためにあえてワイヤーを極端に歯肉に近づけないように設計されていて、歯磨きがしやす
くなっています。
スロットの形状にこだわり
その他にも、マニアックな内容になりますが、前歯のスロットの底面は、直線でなく、円の一部のような曲線になっています。これは、知ると本当に理にかなったことだとわかるのですが、ワイヤーの形状が、小臼歯より後ろは、比較的直線に近い形状なのですが、前歯部は、ワイヤーの形状が曲線で、そのワイヤーがスロットにしっかり入るようにと底面を曲線にされています。
ここまでこだわられたブラケットが、30年以上も前に作られたということが、驚きです。
問題点
ただ、フジタブラケットにも問題があって、複数のスロットを極めて正確に小さなブラケットにミリングすることは
至難の業で、かつては、時計メーカーのシチズンが作っていたのですが、今は、作ってくれる精密機械メーカがなく、生産が一時的に止まっています。
何はともあれ、この優れたブラケットの良さを知ってもらいたいと思います。